さぁ、今回も小さいです。体重2.60kg。飼主さんがあやまって踏んでしまったとのこと。脛骨だけでなく腓骨(細い方の骨)も折れています。腓骨が折れているかいないかで治療は大きく変わりますが。
AO/ASIF による日本初の獣医の骨折治療のPrinsiplesコースが横浜で開かれたのが、かれこれ10年前の2008年です。胸躍らせて参加したのが昨日のようですが、もう10年経つんですね。その2年後にAdvanceコースが開かれ、そちらにも参加しました。昨年だったか札幌でMasterコースが開かれたようですが、知ったのはあいにく定員がうまってからでした・・・。
当時、これだけの洗練された骨折治療の勉強会は初めてということもあり、多くの整形好きの先生が参加されましたが、私自身、プレートとスクリューを用いた内固定に傾注しすぎていた感じはありましたが、この勉強会に参加し、プレート法と髄内ピンの併用法(プレート&ロッド)などを知り、骨折治療の幅が広がったきっかけになっています。
今回のような骨折には、当時ならプレート法でがっちり固めて・・・、と思ったことでしょう。今はプレート&ロッドで治したいと思います。当院も時代の流れもありロッキングシステムも揃いつつありますが、あまりに強度を高めすぎても治癒が遅れる可能性があります。春先にあった両側撓尺骨骨折のトイプードルの症例は、今ならロッキングを使うかもしれませんが・・・。その分、費用も上がってしまいます。
オペ前のレントゲンはこんな感じ。
術前のプランニングとしては、1.25か1.4mmのキルシュナーを順行性に入れ、10穴くらいの1.5mmスクリューを各骨片に4皮質骨くらいずつ入れる、でした。


実際にオペをしてみると、髄内ピンは1.25mmが丁度良さそうです。

プレートは予定通り。


スクリューは予定ほど入れることはできず、各2皮質骨のみとなりました。それでも、この若さでこの体重であれば、十分な強度の髄内ピンを入れましたので、あとは横回転の制御が主なので、2皮質骨でもオッケーだと思います。

とある整形の実習で、猫のこの部分の骨折には全て創外固定で治すという講師の先生のお話がありましたが、私は経験から創外固定の選択は常に2番目以下かな・・・。春先の開放骨折ではファーストチョイスでしたが。
骨折治療の学びはじめは、自分はこの方法でとなりがちですが、幅広く学んでケースバイケースで治療を考えるべきでしょうね。
術後10日あまり立ちますが、経過は順調のようです。