今回ご紹介するのは、6歳のミニチュアシュナウザー(避妊メス・体重5.1kg)の症例です。

この子は2024年11月7日に初めて来院されました。この時から飼い主様は日頃から歯磨きを週に4回ほど実施しており、ワンちゃんの元気や食欲にも問題はありませんでした。しかし、2~3カ月前から歯石や口臭が気になるとのことで受診されました。なお、それ以前には別の施設で無麻酔での歯石除去を受けていたとのことです。

初回検査・治療

初めての麻酔処置は2024年11月26日に行われました。この際、埋伏歯や奥歯を含め数本の抜歯を実施し、およそ半分の歯(20本)に対してSRP(歯周ポケット内の徹底的なクリーニング)を実施しました。BOP(歯肉の出血箇所)も41%と高く、歯周病および歯周炎が進行している状態でした。

1年後の再評価

2025年11月22日に、再度麻酔下での検査を行いました。前回治療後も歯磨きを継続していただいていましたが、BOPは42%と改善が見られず、SRPが必要な歯も前回より増えて23本と多く、歯周病の改善も見られませんでした。この結果を受けて、歯磨きの個別指導を受けてもらいました。

再治療とその効果

歯磨き指導を受けてもらった上で歯磨きを継続してもらい、約5カ月後、3回目となる今回の麻酔下検査を行いました。その結果、見た目でも歯肉の炎症は明らかに減っており、BOPも27.6%まで改善し、歯磨きによるプラークコントロールの効果が確認できました。一方、歯科レントゲンで一部の歯では骨吸収の改善は認められず、歯周病の進行が止めきれない状態でした。

治療方針の決定

今回の検査結果では歯磨きによって炎症は改善しているものの、一部では歯周病は回復しないという状況でした。飼い主様は大いに悩まれましたが、改善が難しい歯を残すことで周囲の歯(特に裂肉歯)へ悪影響を及ぼす可能性を考慮し、今回は改善が見られなかった歯の抜歯を決意されました。

抜歯の目的

抜歯は、必ずしも行わなければならないものではありませんが、今後の歯周病管理をより良くするために選択しています。

  • 物理的にプラークが付着する歯の数を減らす
  • 歯と歯の間隔を改善し、歯磨きをしやすくする

これらを行うことで、口腔内環境を整えることを目的としています。

また、今回改善が見られなかった歯はⅢ度分岐部病変を伴う歯であり、歯磨きによる管理が難しい部位でした。このような麻酔下でしか磨けない部分がある歯を残すことは短期間での麻酔処置を必要としてしまうため、抜歯を選択することがあります。

まとめ

歯磨きをしっかり行うことで、歯肉の炎症は確実に改善することがわかりました。
しかし今回の症例では、分岐部(歯の根が分かれる部分)に重度の病変を伴う歯があり、  
この部位は歯磨きによる管理が非常に難しいため、歯周病の進行を完全に抑えることができませんでした。
歯周病は進行すると元の状態に戻すことは難しく、特に裂肉歯に隣接する歯では、保存を試みることが必ずしも良い結果につながらない場合もあります。
そのため、将来的な悪化を防ぐ目的で、あえて歯を減らすという選択をすることもあります。このような抜歯は「戦略的抜歯」と呼ばれ、歯周病管理の方法の一つです。

また、今回のように歯磨きの「頻度」だけでなく「方法」も非常に重要です。  
自己流では磨けていない部分も多いため、適切な磨き方を知ることが歯周病予防につながります。
当院では個別での歯磨き指導も行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

歯周病は、日々のケアと定期的な評価の積み重ねがとても大切です。
気になる症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。