今回は10歳のトイ・プードル(オス、4.95kg)が、
- 「最近固いものが食べられない」
- 「食べる時にカリカリ音がしなくなった」
- 「口臭がある」
- 「前歯が抜けた」
とのことで来院されました。
2~3年前から歯石が気になり始め、同じ頃に他院で歯石除去を受けていました。
ご自宅では歯みがきは怒ってしまって難しく、歯科用ジェルを毎日塗っているそうです。
歯科検診
下顎切歯には線維が入り込んでおり、多量の歯垢が付着していました。全体的に歯石が多量に付着し、歯肉には発赤と退縮がみられました。
ほとんどの歯で重度の歯周病が疑われ、約35本が抜歯適応となる可能性がある状態でした。
歯科健診時には35本の抜歯にご同意いただいていましたが、手術当日には「まだカリカリ噛む音がしていました」とのお話もあり、オーナーさんの中には“まだ噛めているなら、残せる歯もあるのでは”という期待があったように感じられました。痛みからは解放してあげたい、でもできるだけ歯は残してあげたい、そんな思いの間で気持ちが揺れている様子がうかがえました。
麻酔下検査・治療
動揺度3、根分岐部病変3度、さらにレントゲンで周りの歯と比べて歯髄腔が広く、失活が強く疑われる歯については保存が難しいと判断し、抜歯しました。裂肉歯の隣接歯に関しては、歯周病は軽度でしたが裂肉歯を残すために戦略的抜歯を行いました。
一方で、食べ物を噛むうえで重要な裂肉歯と犬歯については、スケーリング・ルートプレーニング(SRP)を行いました。
術後検診
ご家族からは、これまで寝ている時間が多かったのに対し、術後は活動的に過ごすようになったとのお話がありました。
また、来院時の表情も術前と比べて明らかに明るくなっていました。
まとめ
今回の症例では、術後1週間という早い段階で日常生活に明らかな改善がみられました。
術前は寝て過ごす時間が多かったとのことでしたが、術後は活動的になり、来院時の表情も明らかに変化していました。
その様子を見て、オーナーさんもとても喜んでおられました。
口腔内の痛みや不快感を取り除くことは、見た目をきれいにするためだけの治療ではありません。
食べやすさ、活動性、表情など、日常生活の質、つまりQOLの改善につながります。
また、慢性的な口腔内の炎症や痛みは、食欲や活動性、体調にも影響することがあるため、歯科治療はお口の中だけでなく、全身状態を支えるうえでも大切な治療だと考えています。
本来であれば、ほとんどの歯が抜歯適応となる症例でした。
しかし今回は、オーナーさんの気持ちをくみ取りながら、
痛みの原因となる歯はしっかり治療しつつ、なるべく「噛める状態」を維持することを目標に治療を行いました。
また、口臭があるとのことでしたが、本例では下顎切歯に入り込んでいた線維が1番の原因です。これは歯周炎が原因で歯根が露出し、線維が溜まりやすい状態になっていたことが原因です。そして線維はプラークが停滞しやすい環境を作ってしまうため、強烈な悪臭の元となってしまいます。歯周炎で線維状異物が溜まってしまう子も少なくありません。口臭に関しては線維を取り除くだけでもかなり改善したと思います。
歯みがきはこれまで難しかったとのことですが、今回の治療でお口の問題が軽減することで、口腔内のケアを受け入れやすくなり、少しでも長く残せた歯を守っていければと考えています。













