今回は、右上犬歯の変色を主訴に来院されたわんちゃんの症例をご紹介します。

ミックス犬、8歳くらい、避妊メス、18.7kgの子です。
3週間ほど前に、右上の犬歯が「うっ血したような色」に変わっていることに気づき、来院されました。

ご自宅では月に1回ほど歯磨きをされていたとのことです。

歯科健診

病院では興奮してしまい、しっかりと口腔内写真を撮影できる状態ではなかったため、今回は飼い主さんにご自宅で写真撮影をしていただき、その写真をもとに診察を行いました。

  • 104の変色
  • 広範囲での歯石付着
  • 切歯の欠け
  • 205の過剰歯

が認められました。

104は歯髄壊死が疑われ、治療方針についてご相談しました。
飼い主さんとしては「なるべく歯を残してあげたい」というお気持ちがありましたが、根管治療(RCT)を行った場合は、治療後も麻酔下での定期的なチェックが必要になります。

麻酔を何度も行うことへの不安もあり、相談の結果、104は抜歯を選択されました。

麻酔下検査・処置

詳しく検査を行ったところ、切歯を含めその他の歯に新たな破折は認められず、205の過剰歯も重度の歯周炎は起こしていませんでした。
歯石の付着は認められましたが、全体として歯周炎の進行は軽度であったため、今回は104の抜歯のみを実施し、SRPは行わずに終了しています。

まとめ

歯がピンクや紫、黄色など歯そのものの色が変わっている場合、9割程度が歯髄壊死を起こしていると言われています。変色は歯の内部で出血や炎症が起きているサインで、歯髄壊死へ進行しているケースがほとんどです。また、色が変わっていなくてもレントゲンを撮ることで広い歯髄腔(根管)や根尖周囲の透過性亢進などの所見で歯髄壊死が発覚する場合もあります。

歯髄壊死すると、その歯では象牙質の形成が行われなくなり、歯自体がもろくなっていきます。さらに内部で感染が進行すると、根尖膿瘍などの原因になることもあります。

一見すると「色が変わっただけ」「少し欠けただけ」に見えることもありますが、歯の中ではすでに大きな変化が起きている場合があります。
歯の色の変化や欠けを見つけた際は、「様子を見る」のではなく、早めの受診をおすすめします。歯髄壊死が認められた場合は根管治療もしくは抜歯の必要性があります。

出典:小動物の実践歯科学、内因性色素沈着 緑書房