10歳、避妊済みの7.5kgのトイプードルの子です。
1か月ほど前から口臭が気になるようになり、歯茎から出血することがある、顔を触ると嫌がるとのことで来院されました。
この子が当院で歯科処置を受けるのは、今回で3回目です。
○3年前、初めての処置
最初に来院されたのは3年前でした。
右下の奥歯、408・409 付近の歯肉に腫れと出血があり、かかりつけの動物病院では抜歯を勧められていました。
飼い主さんからは、「できるだけ大きな歯、特に噛むために大切な歯は残してあげたい」というご希望がありました。
もともとご自宅ではガーゼを使った歯磨きをしてくださっていましたが、よりしっかりケアできるように、この頃から歯ブラシにも少しずつチャレンジしていただくようになりました。
検査すると、409は歯肉が下がっているものの、まだ保存できる状態と判断しました。
そこで409を残すため、歯周病が進んでいた408の抜歯を行い、409はSRPをしっかり行ました。
○1年半前、2回目の歯科処置
次に来院されたのは1年半前です。
歯磨きで強く擦りすぎてしまったのか、その頃から口を痛がる様子があり、元気や食欲も落ちてしまったとのことでした。かかりつけの動物病院で痛み止めを処方されると状態は改善したそうですが、ごはんを食べるときには右側を使うことが多く、左側では噛みたがらない様子もみられていました。
このときも、「できるだけ噛むために大切な歯は残したい」というご希望がありました。
状態の悪化していた切歯2本のみを抜歯し、それ以外の歯についてはSRP(歯肉の中まで付着した歯石や汚れを除去し、歯の根の表面をきれいにする処置)を行い、できる限り保存しました。
○歯科検診
そして今回、再び歯肉から出血するようになったとのことで来院されました。
歯科診察では全体的に歯石の付着がみられました。
下顎の切歯は歯肉が下がっている部分はあるものの、診察時点ではすぐに抜歯が必要と思われる状態ではありませんでした。
一方、左上の奥歯である208では、歯肉に孔がみられ、今回は抜歯が必要となる可能性が高いことをお話ししました。
これまではできるだけ歯を残したいというご希望でしたが、飼い主さんからも、「10歳になり、年齢のことも考えると、今回は無理に残すより抜歯してもらった方がいいかもしれない」と終活を考えているといったお話があり、必要な歯については抜歯を行う予定で麻酔下歯科処置を実施しました。
○麻酔下検査・処置
麻酔をかけた状態で、検査を進めて行くと 208 を除けば歯周ポケットはほとんどが1〜3mm程度、出血もわずかで、レントゲンでも処置が必要な歯は見られませんでした。
さらに、1年半前の前回の検査と比べても、今回はBOPが低く、歯周ポケットも全体的に浅くなっていました。歯石の付着はみられたものの、歯肉の炎症は前回よりもしっかりと抑えられており、208以外の歯はとても良好な状態を維持できていました。
3年前には歯周病の治療が必要だったこの子ですが、定期的な歯科処置に加えて、もともと行っていたガーゼでの歯磨き、そして1回目の処置後から始めた歯ブラシでのケアを続けたことで、多くの歯を良い状態で残すことができています。
○まとめ
歯周病は、一度進行して失われてしまった歯槽骨や歯周組織を、すべて元通りにできる病気ではありません。
しかし、適切な歯科治療を行い、その後も日々のケアを続けることで、炎症を抑え、進行をできるだけ防ぎながら歯を長く維持することはできます。
この子はもともとガーゼでの歯磨きを続けてくださっており、1回目の処置後からは歯ブラシにも少しずつチャレンジしていただきました。
前回の処置から今回までは約1年半空いていますが、それでも208以外のほとんどの歯は良好な状態を保つことができていました。
一方で、今回抜歯が必要になった208については、もう少し早い時期に歯科検診や処置を行っていれば、残せた可能性も考えられます。
ただし、歯周病の進み方には大きな個体差があります。
「半年に1回なら絶対に大丈夫」
「1年に1回で十分」
と、すべての子に同じ間隔を当てはめることはできません。
大切なのは、その子の歯周病の進み方やご自宅でのケアの状態をみながら、必要なタイミングで歯科検診や処置を行うことです。
そして今回の症例のように、歯周病になったからといって、必ずしもすぐに多くの歯を失うわけではありません。必要な治療をし、残せる歯を残し、その後のケアを続けていく。
その積み重ねによって、年齢を重ねても多くの歯を良好な状態で残すことができると思います。











